双極症の「躁」の理解は、なぜ広まらないのか?
Shrink関連番組「がんばりすぎないで。」でもお話しました通り、双極症は、発症から、双極症と診断されて予防療法を開始するまで、平均4~10年かかると言われています。
その原因の一つは、最初のうつ状態では、うつ病としか診断しようがないからです。よく誤診だと言われますが、躁状態・軽躁状態の経験がない方をうつ病と診断するのは正しい診断で、躁や軽躁がないのに双極症と診断する方が間違っているのです。診断は正しいのに、結果的に、双極症には奏効しない抗うつ薬による治療を受けて、躁転する方がいらっしゃる現状は、現在の精神医学の限界と言わざるを得ません。現状のうつ病の治療ガイドラインでは、うつ病には抗うつ薬を用いることになっており、一部に潜在的な双極症の方がいるからといって、抗うつ薬を使うべきではないとはされておらず、どうしてもこのようなことが起きてしまうのです。
もう一つの原因は、躁という病気をご存じの方が少なく、もし躁や軽躁になった経験があっても、これを病気と思わないために、医師に話さない場合があるからです。医師が訊かないからいけないのでは、というご意見もあろうかと思いますが、実は、構造化面接という方法で、躁エピソードの有無をもれなくしっかり確認した場合でも、過去に躁状態で入院された方が、躁は「なかった」と答える場合は少なくありません。すなわち、ご本人が病気であるという認識(病識)を持っていない場合があるのです。
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