双極症と視床室傍核

これからの道筋
加藤忠史 2026.02.01
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2026年1月15日に、「双極症の原因脳部位として“視床室傍核”を同定 ― 患者死後脳の単一核RNA解析から―」という」プレス発表を行いました。

双極症の原因脳部位として“視床室傍核”を同定 ―患者死後脳の単一核RNA解析から

双極症の脳内病態は未だ十分に解明されていません。これまでの研究は主に大脳皮質に焦点が当てられてきましたが、MRI研究では視床体積の減少も報告されており、動物モデルの研究から、特に視床室傍核に着目しました。

視床室傍核は、マウスなどの研究から、情動制御や報酬、ストレス応答に関与することが明らかになりつつありますが、ヒトにおける基本的な細胞構造はほとんど分かっておらず、双極症との関連も不明でした。そこで、本研究では、双極症患者さん21名と対照者20名の死後脳、視床および大脳皮質(前頭前野)、合計82試料を用いて、単一核RNAシーケンス解析を行いました。

視床室傍核と思われる細胞群を同定し、マウスの視床室傍核の単一細胞RNA解析の結果と比較して、視床室傍核神経細胞であることを確認しました。さらに、空間トランスクリプトーム解析により、同定した細胞群が視床室傍部に存在することを確認しました。その結果、双極症では視床興奮性神経細胞、とくに視床室傍核神経細胞が約半数に減少していることが明らかになりました。この細胞数の減少は、視床室傍核神経細胞のマーカーであるVGLUT2(小胞グルタミン酸トランスポーター2)に対する抗体を用いた染色により、確認できました。

視床・大脳皮質を通して、最も遺伝子発現変動が大きかったのは、視床室傍核でした。視床室傍核神経細胞ではシナプス伝達やイオンチャネル機能に関わる遺伝子群が顕著に低下しており、CACNA1C、KCNQ3、SHISA9など、双極症の遺伝学的リスクと関連する遺伝子が中核をなしていました。また、視床室傍核神経細胞とミクログリアとの相互作用を示唆する遺伝子ネットワークも障害されており、神経―ミクログリア連関の破綻が病態に関与する可能性も示されました。この変化も、大脳皮質よりも視床で顕著でした。

これらの知見から、視床室傍核が双極症の中核病変部位であることが強く示唆されました。本研究により、双極症の病態に視床室傍核が大きな役割を果たすことが示されました。

視床室傍核は、セロトニン神経からの強い投射を受ける一方で、その軸索は枝分かれして、恐怖に関与する扁桃体および報酬に関与する側坐核へ投射する部位です。視床室傍核は、強い生物学的意味(セイリアンス)を持つ外界の事象に対して反応することが知られていることから、感情の強さを制御していると考えられます。マウスで視床室傍核を操作すると、抑制した場合でも、刺激した場合でも、反復性のうつ様行動を示すことから、今回見出された視床室傍核の変化は、双極症の結果ではなく、原因であると考えられます。

今後は、視床室傍核を標的とした脳画像診断法の開発が期待されます。また、動物モデルやiPS細胞を用いた機能解析を通じて、視床室傍核神経細胞障害がどのように情動変調を引き起こすのかを解明することで、病態修飾的治療法の確立につながることが期待されます。
https://www.juntendo.ac.jp/news/25887.html

今回は、この発表に自分で突っ込みつつ、これからの道筋についてお伝えしたいと思います。

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  • 原因脳部位と言い切って良いのか?
  • 鍵は再現性
  • 診断・治療への道のり
  • 治療法開発
  • おわりに~プレス発表とは

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