適応障害とは何か
仕事を長期に休職している方の診断名で、うつ病よりはるかに多いのが、「適応障害」―今のDSM-5TR診断基準では適応反応症というのが正式名称なのですが、本稿ではよりなじみのある「適応障害」を使います―です。
現代の職場でのメンタルヘルス問題で、最大の問題がこの「適応障害」という病名があまりにも気軽に使われており、しかもこの病気をどう治療すべきか、一致した見解がないことだと思います。
うつ病、双極症、PTSDなどの精神疾患に対しては、診療ガイドラインがあります。しかし、適応障害の診療ガイドラインというのは、見たことがありません。そのため、各医師が思い思いに診断し、治療しているのが現状、ということになります。職場で最も多く見られる精神疾患に、どう診断して、どう治療すべきか、という指針がないのです。これは、精神医学への不信にもつながりかねない問題点だと思います。
適応障害は、①明らかなストレス要因があって、②その要因により予測されるよりも強い反応が生じて、③そのために仕事に差し支えている、④しかし、うつ病などの他の精神疾患ではない、という状態です。
すなわち、こんなひどい目にあったら誰だってうつ状態になるよ…と思うようなひどいパワハラを受けて落ち込んでいる状態は、適応障害とは言わない訳です。誰もがうつ状態になるような行為を受けているとなると、もはや医学の範疇ではなく、法律の問題になり、相談すべきは精神科医でなく、弁護士ということになるでしょう。
また、ストレス要因による反応が強くて、うつ病の診断基準を満たすと、診断はうつ病、ということになり、こうなると自己回復力を超えてしまい、ストレス要因がなくなっただけでは治らない、脳の病ということになります。
僕は、「精神疾患は脳の病だ」と説明することが多いのですが、この適応障害は、脳の病か、誰でも起きる自然な心の反応か、その境目が微妙です。
うつ病というほど重い状態であれば、脳の病気ですね、と説明できますし、逆に、ストレス要因により、予測される範囲の反応であれば、こんなことがあれば誰でも落ち込みますよね…、と、「心の問題」として説明できます。
では適応障害は結局どちらなのか?
ストレス要因のせいなのか? 脳の病気なのでしょうか?