毛づくろいしすぎるマウスが強迫症の原因解明の手がかりに?
「精神科医/脳科学研究者 加藤忠史のニュースレター」は、脳とこころに関する出来事、論文、ニュースについて、精神医学・脳科学の舞台裏を交えながら、解説しています。よろしければどうぞご登録下さい。
強迫症とその病態
強迫症(OCD: Obsessive-Compulsive Disorder)は、反復的な強迫観念(手が汚染されているなど)と強迫行為(何時間も手洗いを続けるなど)を特徴とする精神疾患です。フロイトは、無意識の葛藤から発症すると考えて精神分析を試みましたが、現在は、SSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)と行動療法により治療されています。精神疾患の中でも、プラセボに対する反応が低い疾患であり、脳の病気の側面が強いと考えられています。脳画像研究から、大脳皮質(主に前頭葉眼窩回)-線条体(大脳基底核)-視床-大脳皮質回路(CSTC回路)の機能障害が示唆されていて、海外では、難治性の強迫症に対して、この経路を直接電気刺激する、深部脳刺激療法も試みられています。
溶血連鎖球菌感染症に伴って出現するPANDAS(連鎖球菌感染性小児自己免疫神経精神障害)で強迫症を呈することがあり、これは感染によって、大脳基底核への自己抗体が生成されるためではないかと考えられています。しかし、一般の強迫症患者において、なぜこの回路が機能障害に陥るのかについては、わかっていないことが多いのが実情です。
強迫症の原因解明か?
そんな中、強迫症の細胞レベルでの原因解明につながる論文が、8月14日にNeuron誌に掲載されたので、ご紹介したいと思います。
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